映画「君の名は。」ジブリを抜き去る
- Seiko
- 2016年10月5日
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2016年夏、シン・ゴジラが公開され、1954年公開の「初代・ゴジラ」との比較が話題となった。その話題を大きく塗り替えているのが、同じく東宝が配給している新海誠監督作品の「君の名は。」である。8月26日の公開以降空前の大ヒットとなり、累計興行収入は128億円をを突破した。ちなみに、偶然にも1954年にも「君の名は」という映画が「初代・ゴジラ」公開後に封切られ、同年度の興行収入ランキング1位となっている。
「君の名は。」は、朝目が覚めると主人公達がなぜか泣いているというシーンから始まる。

新海誠監督は万葉集の和歌「思ひつつ 寝ればや人の見えつらむ 夢としりせばさめざらましを」から着想を得たという。同作の舞台は、1000年ぶりとなる彗星の来訪を一ヶ月後に控えた日本である。田舎に暮らす女子高生・三葉と、東京で暮らす男子高校生瀧はある日不思議な夢をみる。抜け落ちている記憶や時間、奇妙な夢。二人は寝ている間にお互いの心が入れ替わってしまうことに気づく。携帯電話のメール機能等を駆使しながら、この不思議な状況に対応していくが…ここから定番でもあるすれ違いやSF的な要素も加わり、話はドラマチックに展開していく。
新海誠監督は「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」で知られており、その美しい風景描写には定評があった。今回はそこにスタジオジブリで長年活躍していたトップアニメーター達が集結。作画監督は「千と千尋の神隠し」や「思い出のマーニー」を手掛けた安藤雅司氏、キャラクターデザインは「あの花」や「心が叫びたがっているんだ」などの田中将賀氏など錚々たる面々が集まった。特に終盤の主人公・三葉が転ぶシーンは「人狼JIN-ROH」や「ももへの手紙」の監督である沖浦啓之氏が手掛けており、圧巻の出来である。
映像だけではなくストーリーにも現在の日本を反映している描写が随所に見られる。ポスターにもあるが、作中には1000年に一度の彗星が飛来するという設定があり、この不可抗力な天災の描かれ方は、嫌が応にも東日本大震災を思い出させる。大災害を前にした圧倒的な人間の無力さ、非力さの提示と、それに立ち向かう人間の描写は、「シン・ゴジラ」と共通している部分がある
また「君の名は。」では巫女でもある主人公が神楽を舞ったり、組紐を編んだりする日本的な要素もふんだんに盛り込まれている。あえて日本を全面に出す点も「シン・ゴジラ」と通じるのではないだろうか。
イギリス・アイルランドでは11月24日より公開となり、また年内の中国での公開も決定するなど、80カ国以上での公開が決まっている。2016年の「君の名は。」は一体どこまで広がっていくのだろう。
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